ういさんはたいそうよく喋る。
2歳になったばかりにしては単語もたくさん知っていて文章を使うのも上手な方なのだが、そういうことではなく、とにかく、喋ることに興味がある、喋るのが好き、思ったことを喋らずにだまっていったら窒息してしぬ、というタイプのようだ。
CMソングや番組で誰かが言っていたフレーズ、ミッフィちゃんの台詞、おばあちゃんが言っていたこと、母ざるの言い草、あらゆる言葉を思い出しては反芻し、何度も何度も喋る。新しい言葉もすぐに覚え使いたがる。思ったこと、今見たもの、聞こえたこと、思い出したこと、感じたこと、あらゆることを朝起きた瞬間から晩眠りに落ちる瞬間まで喋りっぱなしなのだ。
そしてものすごーく声が大きい。更にしつこい。こちらが相づちをうつまで何回でも何回でも繰り返す。面白いし可愛いのだが、時々おねがいだから黙ってくれと思うこともある。
そんなだから当然散歩中も延々と喋り続け、近くを通る人皆が振り返るし喋る内容はそこらじゅうに全部筒抜けである。
ちょっとあぶなそうなおじさん(昼間からアルコール入って目がどんよりなさっているかんじ)が黒斑の犬をつれてベンチですわっていると、
ういさんが「パンダだ!パンダだ!パンダだ!パンダだ!パンダだ!」と叫ぶので、
母ざるは「か、かわいいね、かわいいいぬだね、もういいから、は、はやく行こうね」と笑顔&早足。
ちょっとあぶなそうなおばさん(カーラーを頭に巻いたままパジャマのまま上から青いロング丈のウィンドブレーカーを羽織り、ママチャリで18禁かつ違法ぽいチラシを投函しまくっていらっしゃる)がマンションの前をうろうろしていると、
ういさんが「あおだ!あおだ!あおだ!あおだ!あおだ!」と叫ぶので、(アホだ!を連呼しているようにも聞こえる)
「あ、青だね!青!あおいくるまだね、おとうさんといっしょだ、あおいくるまだね!!」とむこうに青い車が通り過ぎたのをラッキーとばかりに母ざるがごまかしているのに
「キティちゃんだ!キティちゃん!キティちゃんがついてる!!」(ウィンドブレーカーの裾にキティちゃんのワッペン有り?)
「うう、かわいいね!買い物行かなきゃ!はやくいこうね!」とやはり足早に。
いつだったか母ざるが産後入浴の許可がおりたので、妊娠後期に安静生活を指示されて以来数ヶ月ぶりにやっと一緒に入浴したとき、凄まじい痕跡の残る産後のお腹を見て仰天したういさんは「な、なんだ!?お、おかあさん!!おへそ!!なんだ??!!はやく!はやく!シャワーして!!もっとして!!」そのおなかの汚れ(!)を早く洗い落とせもっとよく洗え、と。
「おかあさん、まえはとてもきれいなおなかしてたんだよ。なんでだろうね、、、。」
お風呂からあがって、蕁麻疹が出ていた母ざるは足に薬を塗っていたところ
「おかあさん、あんよブツブツだ。ブツブツ!」
「そうだね、ぶつぶつだね、ういちゃんのいうとおりだ、お薬だから触ったらだめだよ、、。」
そして乾燥しきってささくれだってきた足の裏にクリームをぬっていると
「おかあさん、あし、カサカサだな!カサカサだな!」
「うん、カサカサだからようくクリームぬっとくよ、、、。」
このときはさすがに母ざるちょっと落ち込みました。
フライドポテトを一口食べるごとに「これたべてもいい?」というので、1本につき5回くらい「うんたべてもいいよ」と答えなくてはならず、少し食べさせるだけでも100回くらい相づちを打たなくてはならないういさん。
「ういちゃん何何しなさいよー」
「♪イヤイヤいやのいやっきお〜がん」(ヒヤキオーガンCMソングの替え歌)
沐浴を終えほんのり桜色になってニコニコ笑っているコタロウの横にういさんが来てじーっとコタロウをみつめた後、無邪気な笑顔で
「ブタ?」
もういいから。すこしだまっててください。